バスクの豊かな食文化を 盛り込んだ料理を堪能



Saint-Jean-Pied-de-Port

(渋谷/バスク料理)

「我が家のキッシュ」840円。和田精肉店のヴァントレッシュ入りのキッシュは、サクッとしたパイにとろんとした舌触りの生地がたっぷり


渋谷駅から明治通りを歩くと、並木橋交差点を越えた先のビル2階にバスク州旗が見えてくる。バスク料理の代表格・渋谷『アバスク』でオープン時から腕を振るってきた和田直己シェフの新しい城だ。店名はシェフが修業を重ねたバスク地方の地名に由来。すっきりシンプルにまとるた店内の随所に、バスクらしいモチーフを散りばめている。「バスクを求める人にはドンピシャなお店」とシェフが胸を張る通り、食事を楽しむのに必要な要素だけが詰まっている。

グリルして余分な脂を落としたシンプルなひと皿「バスク豚のグリエ」2940円。豚の甘みと唐辛子入りトマトソースのハーモニーを堪能しよう


実家が精肉店を営んでいたこともあり、10歳で料理の楽しさに目覚め、料理人を志したというシェフ。フレンチやイタリアンを学び、2003年に知人のシェフの紹介で渡仏した先が、たまたまバスク地方のレストランだったという。その当時、バスク料理は今ほど知られておらず、シェフも何の先入観もなく赴いたのだとか。これがまさしく運命の出逢い。フランスとスペインの国境にあり、豊かな自然の恵みを受けた食材の宝庫、そして異文化が融合した独自の食文化であるバスク料理。「面白いものがたくさんあった」と魅了され、古典的なバスク料理まで幅広く習得してきた。

「もっともっとバスクらしいお店にしていきたいですね」と日々研鑽を重ねる和田シェフ。より幅広いバスク料理の展開に期待が高まる


この店でいただけるのは、定番から珍しいものまで、オリジナルのアレンジを加えたもの。肉、魚といったジャンルに特化せず、オールラウンドに楽しめる。尊敬する『レストラン・シシヌー』のミッシェルシェフに倣い、コースは前菜、メイン、デザートを選んで組み立てるスタイルで4200円、追加料金はない。アラカルトも豊富で、実家の和田精肉店で丹精込めて作られたヴァントレッシュ(パンチェッタ)入りの「キッシュ」や「リエット」、バスク料理ではないが「パエリア」も並ぶ。シェフが現地で食べておいしかったという「パリエア」を再現したもので、魚介の滋味深い味わいや絶妙な固さの米などに、丁寧な仕事ぶりが表れている。また、ワインはフランス産を中心に約50種を揃え、バスク産のシードルも用意。極めつけの本格デザートも充実し、知らず知らずのうちに胃袋を鷲掴みにされてしまう。2人で1コースをシェアしてもいいし、ワインとタパスを楽しむのもいいだろう。

差し込む陽光と観葉植物の緑が清潔感を満たす店内。ゆったりとしたテーブル席のほかに、カウンターも2席あり、優雅なひとり時間を過ごすこともできる


バスク料理の認知度は上がってきたが、それでもグルメなイメージを持っている人も少なくない。ビストロよりもキレイだがカジュアルな雰囲気なのは「おいしい料理の敷居を低くしたかった」から。すでに第一人者として活躍している和田シェフでも「まだまだ途上です。背伸びをせずに、今の自分にできる精一杯をこなしていきたいですね」と謙遜する。本物の美食をカジュアルに提供してくれる懐の広さに、自然と足が向かってしまいそうだ。

店名Saint-Jean-Pied-de-Port(サンジャン ピエドポー)
住所渋谷区東1-27-5 シンエイ東ビル2F
電話番号03-6427-1344
店舗情報https://bimi.jorudan.co.jp/shop/37330/


撮影:山村佳人 取材・文:伊勢嶋暢子(編集部)
このページのデータは2013年4月30日現在のものです。

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