今、行くならこのお店




今、行くならこのお店
ニューオープン・レビュー
(神楽坂/中華)
2015/2/1オープン
枠にとらわれず旬を楽しむ 和の食材を生かす中華料理

「いろいろ野菜炒め」1800円。その時季に旬を迎える野菜を中心に生麩をプラス。この日は紅芯大根、舞茸、タラの芽、ヤングコーン等
神楽坂らしい石畳の小路を抜けると現れる真新しい飲食ビル。その1階には、パッと見ではフレンチかイタリアンを思わせる『ENGINE』というロゴが掲げられ、扉の奥には、アイボリーを基調としたスタイリッシュで温かみのある空間が広がっている。さらに、黒板メニューに目を向けると、山菜やフグといった文字が並ぶ。和食のようでもあるが、実はここは中華料理店。正しくは“和の食材を中華に変える”料理を楽しめる一軒だ。

オーナーシェフの松下和昌氏は、赤坂の名店『うずまき』で2007年のオープン以来、腕を振るってきたという確かな腕の持ち主。独立に際して神楽坂を選んだのは、自分の料理と街の雰囲気が合っていたからだという。和の情緒が漂いながらもフレンチや中華などのエッセンスが加わる神楽坂と、松下氏が生み出す和テイストの中華料理はどこか重なるよう。甘すぎない、酸っぱすぎない、辛すぎないなど、“行きすぎない”ことを心がけ、日本人の舌にしっくりと馴染む料理に仕上がっている。

「中華の食材は通年あるものが多いので、それだけでは面白くない。旬を味わってほしいので、和の食材も取り入れています」と松下氏。時には築地へ足を運び、新しい食材との出合いにワクワクしているという。これらをどんな発想で取り入れているのだろうかと伺うと、パッと思い付くのだそう。例えば、ピータンに和歌山の金山寺味噌を合わせたり、あん肝と聖護院蕪を組み合わせたり。それは、今まで培ってきた経験から導き出されるものにほかならない。味だけでなく、食感や香りのバランスも絶妙で、ほんのりと和が漂う奥行きのあるひと皿として供される。ほかにも「白子の麻婆春雨」「菜の花と干し芋炒め」など、興味をそそられる料理ばかり。しかしながら、もちろんベースは中華。前店からスペシャリテ「黒酢の酢豚」や「坦々麺」を始め、「春捲」「焼売」などの定番料理も楽しめるのはうれしい。

中華料理店とは思えない洗練された空間にゆったりと配された18席。オープンキッチンからは全席を眺められる造りになっている
(エンジン)
住所:新宿区神楽坂5-43-2 ROJI神楽坂1F
電話番号:03-6265-0336
撮影:山村佳人 取材・文:伊勢嶋暢子(編集部)
このページのデータは2015年4月3日現在のものです。